石叫■           「真夜中の叫び」A

人工透析をし、糖尿病もあり、心臓移植後の免疫効果を下げるために日ごろ多量の薬をとっている家内には術後の傷が治りにくいのではないかと云う医師たちの意見もあって、彼ら医師団は手術決断に時間がかかったが、右大腿部ジョイントに入ったヒビに数本のピンを入れる手術は月曜午後三時過ぎ頃に執り行なわれた。それから二時間ほど経った頃、待合室にいた僕の所に手術担当医師がやって来て、「あなたの奥さんのオペは成功です。でも、ジョイントがしっかりするまで、足を曲げたり、重い物を持たないで下さい。しばらくは麻酔が覚めるまで手術回復室に居てもらいますから」と懇切丁寧に説明をしてくれた。

夜の八時過ぎ頃であろうか。家内が麻酔から完全に覚めて、六階の入院病棟に戻ってきた時に、それまではチョットでも体を動かすと叫ぶような声を出していた家内だったのが、どうだろう、シーツを代えるために体を左右に動かしてみても痛みが無いではないか。そんな家内の顔は実に晴れ晴れとしていた。

遅い夕食を待っている間、酸素吸入していた家内は「あれ、鼻が詰まっていないわ。これ酸素をやっているせいかしら」と言うではないか。家内は時に酸素が必要になるほど呼吸が困難になる。今回も入院する時の手の指の酸素吸入示度が90以下であった。看護婦たちがすぐに酸素吸入器をセットしてくれて呼吸が随分と楽になった。そのことを家内は言っているのかと最初は思ったのだが、気を付けて見ると、鼻の形まで変形するほどに膨れ上がり、右目の下もかなり大きく腫れ上がっていたものが心なしか引けているようだ。鼻先は紫色に腫れあがって痛々しかったのが、今はピンク色になっている。思わず僕は「節子、ガンが癒されているよ」と叫んでしまった。家内も自分の手でそれらの箇所を触ってみて、「そう、小さくなっているわ。首の下にあったものもそうよ」と言うではないか。「これ神様よ!」と思わず二人で叫んでしまった。ガンの最終診断と治療はまだ十日も先の話であるから慎重な言動でないといけないが、この度も多くの祈りによって神の大いなるみ業を見せて下さっているようだ。

大使徒パウロは「神は真実である。あなたがたを耐えられないような試練に会わせることがないばかりか、試練と同時に、それに耐えられるように、のがれる道も備えて下さる」(第一コリント10:13)と宣言する。信仰の薄い者たちであるがゆえに、神はこのように実際に見える形で私たちに祈りの大切さと、今も神ご自身が生きて働いておられるということを見せて下さったのだった。