石叫■             「ガン」

今年のはじめ頃から家内の右鼻腔内に異物が出来はじめた。最初はあまり気にはしていなかったのだが、次第にそれが大きくなってが詰まり始めたので、結局それは除去することになった。5月19日にダウニーのカイザー病院で鼻腔専門の医師によって摘出手術を行なったのだが、ものの一週間もしない間に、その跡が再度膨れ上がってきた。それははた目にも分かるほどの膨らみであった。そこで今度はホームドクターに再度診断してもらうことになった。その結果「これは出来物(マス)です」と言われた。これと言ったコメントはなかったが、ただ鼻腔医のフォローアップだけは確実にするようにと何度か言われた。

それから4日ほどしてUCLAに出かけた。腎臓移植リストに戻してもらうための査定であった。3時間ほど待たされた後、担当医師が先ず鼻のオペの結果について言われた。それまでは術後の結果をあまり気にはしていなかったのだが、「鼻のバイオプシーの結果ですが、それはガンですから、今とっている免疫を下げる薬はガン細胞を増殖するので、腎臓移植はガンが確実に治らないと移植出来ません」と単刀直入に言った。その時、初めてガンだと分かったのだ。でもその時は頭が混乱していてどう理解して良いのか検討すらつかなかった。

数日後、しこりはその後も大きくなっているので、子供たちからもER(緊急治療)に行って欲しいと言われたこともあり、ダウニーのカイザーで診てもらうと、担当医師はガンだとは言わなかった。そこで僕が「これはガンでしょう」と言うと、「誰がそう言ったのか」と逆に問いただしてきた。「UCLAで」と言うと初めて彼は認めたのである。「今ここでは何も出来ない。ガン専門医に診断してもらうことが最善です」と言い、続いて「その医師から二日以内に連絡を取らせます」と確約してくれた。カイザーではどうしてガンだと言わなかったのか不可解であったが、その時もまだガンという言葉だけが僕の頭を素通りして行った。その翌日オペをしてくれた医師が診察してくれた。そして言った「これはガンです。すぐにも専門医に診てもらって下さい」と。その時の彼の言葉は重かった。そこで初めて事態がただならぬ状況だと実感したのだった。

 その帰り、パーキング場に戻る道すがら、家内に言った「『真夜中ごろ、パウロとシラスとは、神に祈り、さんびを歌いつづけた』(使徒行伝16:25)とあるように、俺たちもこれを通して賛美をし続けような」と。それは自分に言い聞かせる言葉でもあった。そうでなければ自分が打ちの目されそうであった。