石叫■            「愛の手紙」

 『トム・ソーヤの冒険』の著者マーク・トウェンは、妻を大へん愛し尊敬した人であった。彼女と離れている時はもちろん、家に一緒にいるときですら、妻にあてて手紙を書くことを怠らなかったという。
さすが作家である。左記のものは1885年11月27日、妻の40回目の誕生日に充てた手紙である。

 

「僕たちは出発点からはるかに遠い、新たな一里塚にたどりついたのですね。ふり返って見る景色は楽しい……谷間の緑は青々とし、野には花が咲き、丘には遠い昔の、あの朝の幸福な記憶のやわらかな光の中に眠っています。そして僕たちの人生の旅にはこのように尊く、感激に満ち、このように美しく優雅な伴侶がいるのです。何とそれらが前進の足取りを軽くしてくれることでしょう! 人生の夕映えに向かっている今、これらは僕たちと共にあり、二人の手を取り、足をしっかり支えています。この伴侶がいる間、また二人の愛が常に成長して衰えることがないかぎり、二人の人生の道はこれからもなお花々や緑濃い野を通り、夕暮れの光は遠い昔のあの朝の光のように楽しいことでしょう。夫より」(小原国芳著・「例話大全集」より)。

 

  マーク・トウェン夫妻は、お互いの関係を豊かにする多くの美しい自然や楽しい記憶に彩られているから愛が深化してきたと言う。彼らのように私たちを取り巻く多くの物言わぬ伴侶たちに心を開きたいものである。そうなのだ。私たちを取り巻く自然の環境も旅を共にする無くてはならない伴侶なのだから。

 「自分を愛するようにあなたの隣人を愛せよ」(マタイ22:39)という聖書で最も大事な戒めがある。実はこのあなたの最も近くにいる隣人とは誰あろう、妻であり夫のことである。だが現実、その隣人との関係は神が最も大事な戒めとして命じなければならないほど、愛するのが難しいという存在でもある。だから絶えざる努力が必要なのだ。「愛は大水も消すことは出来ない」(雅歌8:7)ほどに強く燃え上がると同時に、愛ほどもろいものも無いからだ。

マーク・トウェンと妻ヴィーとの関係は、年月と共に深化していった。この世で愛と尊敬に満ちている夫婦関係ほど尊く美しいものはない。だとするならば、そのための努力こそが信仰者としての最善の証しではなかろうか。そこで僕は考えた。このマーク・トウェンの手紙をじっくり妻に読んで上げようと!