石叫■            「聖夜に再建誓う」

 一月五日付けの『ラフ新報』に掲載されていた「にっぽんの絆」にあった{聖夜に再建誓う}からの引用である。経営難の中で闘う父子家庭の一コマである。

3本のろうそくの火を兄と妹で吹き消した。12月24日の夜、近所で買ったクリスマスケーキを、父親の高木祐次さん(42歳)が切り分ける。ケーキをほおばった妹が笑顔で言った。「プレゼントはこれからもらうの」。前日、一度も会ったことのない母の仏壇に手紙を置いた「ママへ。サンタクロースにお願いして贈り物を届けてちょうだい」と。ケーキを食べ終え、長男の玲君(11)と長女の愛実ちゃん(8)と一緒に風呂に入ると、祐次さんは大田区の自宅から自営のすし屋「大森江戸銀」に向かった。店内に客は一組だけだった。カウンターの奥で祐次さんのお父さんが手持ちぶさたにしていた。12月の宴会予約はゼロ。「職人人生で今が最悪」とお父さんがぼやく。2002年2月、祐次さん一家を悲劇が襲った。愛美ちゃんの出産で妻の豊美さん(当時35歳)が大量出血。19日間の入院の末に亡くなった。葬儀で「ママ起きて!」と呼び掛けた当時2歳の玲君にも母の記憶はない。祐次さんは両親との同居を決めたが、両親に家事や育児を任せる訳にはいかない。二人を保育園に預け、店と自宅を往復する日々。どんなに仕事が忙しくても、午後6時には迎えに行き、オムツを替えた。愛美ちゃんは昨年2学期「学校に行きたくない」と泣き出した。理由を聞いても答えない。いじめを疑ったが、祖母に「ママがほしい」とこぼしていた。昨年の夏休みのホームステー先で同年代の子の母親に接し、「髪を編んでもらったのがうれしかった」と話していたのを思い出した。母のいない現実に気落ちしたのかもしれない。思春期を迎える愛美ちゃんとの接し方には不安がある。最近、玲君が「すし職人になりたい」と言い出した。「こんな分が悪い仕事はないぞと口ではそう言ったが、うれしかった。日付が変わる頃、祐次さんが帰宅した。あどけない寝顔が並ぶ枕元にそれぞれサンタのプレゼントを置いた。新年会の予約はまだない。それでも新しい年に期待をしたい。「店を閉じることを考えるのは最後。この子たちのために、やれることをやろう」

 主イエスは「明日のことを思いわずらうな。あすのことはあす自身が思いわずらうであろう」(マタイ6:34)と宣言する。今日与えられた仕事を精一杯すればそれで良いというのだ。それだったら生きられるではないか。今どんなに苦しくても、明日は文字通り明るい希望の日があなたを待っているのだから。